奈良の山間部…吉野にある「花巴」の醸造元である美吉野醸造の酒蔵見学へ行ってきました!
こちらの花巴の日本酒は京都日本酒体験でも飲み比べていただける日本酒です。
現代の醸造技術で管理された酒造りではなく、自然豊かな環境の中、原材料である米や酵母・自然背景に寄り添って日本酒を仕込んでいく手法をとられてます。
どのように日本酒を仕込まれているのか…日本酒の酒造りでの想いや手法などを伺い、普段仕込みをされている蔵の見学と、酒蔵見学の後は蔵で醸造された8種類の印象深い日本酒を利酒させていただきました!
奈良・吉野について
奈良・吉野…多分誰もが一度は聞いたことがあるだろう「吉野杉」が有名な地域です。
この吉野杉は江戸時代の頃、酒造りが盛んになり、それに伴い樽丸の需要が高くなりました。
強度が高く、木の香りの良さと日本酒が赤く染まらないことから吉野杉は大変重宝されました。
吉野を流れる吉野川から流して、酒造りの中心地である大阪・堺〜神戸・灘まで2週間かけて
吉野杉を運んでいました。
この吉野川の川沿いにあるのが今回見学させていただいた、花巴を醸造している美吉野醸造さんです。
今回、美吉野醸造の事務所で杜氏の橋本さんにお話を聞かせていただきました!
橋本さんはとても気さくで地元愛と日本酒への情熱に溢れた方でした。
美吉野醸造は有名な酒米や協会酵母を使った一般的な日本酒ではなく、この吉野の風土・四季に寄り添い、吉野の地域の特性を活かした日本酒造りをされています。
もろみの発酵も季節に合わせて、秋・冬・春と仕込みを行っています。
秋は10℃〜17℃くらい(30℃くらいになる年もあるそうです!)で発酵を行い、気温が高い時期は、比較的温度が高くても仕込める水酛をメインに行い、冬はだいたい5℃〜15℃くらいの温度で発酵を行っているそうです。
気温などは毎年違うので、その年その季節により発酵期間なども調節されてます。
酒造りで使用する米も地元の生産農家からのものです。
吉野は山間部にあるため、田んぼとなる平地が少ない地域です。
米の生産農家が試行錯誤して毎年作られる米の生産量は少なく、土地の条件もまちまちなので品質も統一することが難しいそうです。
それぞれの米の特性に向き合い、理解し、それぞれの米の個性を解釈して美味しい日本酒を造る…
それが美吉野醸造の役割だと考えられてます。
酵母も市販の酵母を使わず、吉野の風土に溶けこんだ美吉野醸造の蔵に住みついている「蔵つき酵母」を使用しています。
美吉野醸造では「吉野」の地域性、特性を活かした酒造り、吉野で採れたどんな個性のある米でも使える、生産者の顔が見える商品作りを目指しているようです。
日本酒を通して、地元の産業を支え、世界に吉野の風景(特性・個性)を紹介していきたい…そんな思いの詰まった日本酒が「花巴」です。
原材料について
美吉野醸造で使っている酒米は「吟のさと」という品種が多いです。
吟のさとは、酒米の中では背が低く、台風などで倒れにくい品種です。
また樽酒である”樽丸”に使っている杉はもちろん吉野杉です。
吉野杉は年輪の幅が短く統一するように日照時間などを計算して周りを間引いて成長させます。
樽や桶を作る場合、年輪に剃って切るため、幅が短く統一している方が扱いやすくなります。
余談ですが、樽を作る際に板の面と面がピッタリ合うように削るそうです。
このピッタリ合う面を「正直面」というみたいですよ!
蔵見学へ
《洗米》
美吉野醸造では、米はなんと生産者ごとに洗米されてます。
それぞれの米の特性に合わせて、吸水しすぎないように時間や重さを計って、吸水率を管理しています。
発酵タンクごとにどの生産者の米が何%使われているか分かるようにされています。
《こしき》
ステンレスで出来た和釜で米を蒸してます。
《麹室》
こちらの麹室は50年ほど使われてます。
麹の酵素のバランスを考えながら米麹を作っているそうです。
精米歩合は50%-70%、温度は最大で48℃-50℃、湿度は70%-80%で2日間かけて作ります。
米麹は酒造りのDNAなので、造る日本酒によって作り方を変えるのではなく、どれも同じ製法で作られてます。
《酒母タンク》
美吉野醸造ではどの酒母も蔵についている「蔵つき酵母」を使用してます。
どの酒母タンクも同じ酵母が入っているので、酒母タンクごとに部屋を分けたりせず、同じ場所でそれぞれ同じように発酵されてます。
酒母タンクは濃糖状態にして雑菌などの悪い菌が繁殖しないようにしてます。
状態をみながら2週間ほど発酵させ、最後に「良い」か「悪い」かだけを判断しています。
《発酵タンク》
美吉野醸造で使われている発酵タンクは下記の3種類です。
・サーマルタンク
→発酵が安定しやすい。速醸酛などを仕込むことが多い。
・ホーロータンク
→もろみに四季を伝えやすい。
日本酒の個性が出やすく「語れる日本酒」を造るのに適している。
・木桶
→発酵温度が上がりやすい。主に林業を伝える為の日本酒(ex.樽丸など)を仕込むことが多い。
木桶は仕込む前に熱湯消毒を行い、大切に使用されてます。
この木桶はもう10-20年使用されています。
基本的に火入れする商品は常温で発酵し、生酒の商品は温度管理をして発酵させていくようです。
《絞り》
美吉野醸造では下記2種類の絞り方をされてます。
・ふね絞り(槽絞り)
→酸化しやすい。酸化しやすいので味の変化を生みやすい。
早く味が変化するので、スタートダッシュが可能。
・ヤブタ式
→酸化しにくい。味の変化がゆっくりなので、味の変化を楽しむ日本酒ができる。
このように造られた日本酒「花巴」…いったいどんな味になるのでしょうか?
…次回へ続きます!
帰国子女の国際唎酒師。2児の母で、日本酒や甘酒を使った料理やお菓子作りが趣味。
世界中から多くの日本酒ファンが参加する、京都日本酒体験(Kyoto Insider Sake Experience)ではガイドをつとめる。